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検証

2026年、手取りは「増える人」と「減る人」がいる—数字で検証すると層で逆だった

最終更新:2026年7月

「2026年は手取りが減る」「子育て支援金でみんな負担増」。給与明細に新しい項目が増えるこの時期、そんな声をよく見かけます。この記事は、その空気を否定も肯定もせず、増える負担と減る負担を実際の数字で分解して、月々の手取りが前年からどれだけ動いたのかを検証します。結論から言うと、変化は“層によって逆方向”でした。数値はすべて、このサイトの手取りシミュレーターと同じ計算エンジンで算出しています。

「みんな負担増」は本当か—計算すると層で逆だった

2026年は、子ども・子育て支援金が新しく給与から引かれるようになり、「みんな負担が増える」という受け止めが広がっています。ただ、手取りシミュレーターと同じ計算エンジンで前年(2025年)との差額を出すと、実際は層によって逆方向でした。所得税を納めている多くの人はむしろ前年より手取りが増え、所得税がかからない低所得の層は支援金の新設分だけわずかに減る、という結果になります。

なぜ逆方向になるのか。カギは、2026年1月支払いの給与から月々の源泉徴収に反映された所得税の減税です。増える負担と減る負担を分けて確認し、そのうえで月収別に計算します。前提は会社員・扶養親族なし・40歳未満・全国平均の料率・2026年度で統一します。条件が変わると金額も変わる点は、あとで補足します。

2026年に「増える」負担

まず、負担が増える側です。2026年に新しく加わる、または引き上げられる項目は次の2つです。

  • 子ども・子育て支援金の新設:公的医療保険料に上乗せされる新しい負担です。2026年度の会社員の本人負担は0.115%(労使折半の本人分)で、明細には新しい項目として表れます。
  • 介護保険料率の引き上げ:40〜64歳が対象です。協会けんぽで1.59%から1.62%へ引き上げられます(本人負担は0.795%から0.81%相当)。40歳未満の人には関係しません。

支援金は子どもの有無にかかわらず、公的医療保険の加入者が広く負担します。SNSで「独身税」と呼ばれることもありますが、正式な税金ではなく医療保険料に上乗せして集める社会保険の仕組みです。金額や対象は子ども・子育て支援金でいくら引かれるかで詳しく整理しています。

2026年に「減る」負担

一方で、負担が減る側もあります。しかも、2026年はここに所得税の減税が加わるのが大きな特徴です。減る側は次の3つです。

  • 健康保険料率の引き下げ:協会けんぽの全国平均で10.00%から9.90%へ下がります(本人負担は5.00%から4.95%へ)。
  • 雇用保険料率の引き下げ:本人負担が0.55%から0.50%へ下がります。
  • 所得税の減税(令和7年度税制改正):基礎控除が48万円→58万円、給与所得控除の最低保障が55万円→65万円に引き上げられ、これが2026年1月支払いの給与から毎月の源泉徴収に反映されています。控除が増えた分だけ課税される所得が減るため、所得税を納めている人ほど毎月の天引きが軽くなります。

この所得税の減税は、国税庁の「令和8年分 源泉徴収税額表」に織り込まれており、2026年の毎月の天引きに実際に効いています。よく話題になる「178万円の壁」(2026年度改正・基礎控除の更なる引き上げ)はこれとは別の改正で、月々の天引きにはまだ効かず、年末調整で精算されます(記事の後半で扱います)。

支援金や介護保険料が増える一方で、健康保険料・雇用保険料が減り、さらに所得税の減税が効く。増える側と減る側のどちらが上回るかは、収入によって変わります。ここからは計算エンジンで確かめます。

実際に計算すると、前年差は層で分かれる

下の表は、月収10万円から50万円までについて、2026年の手取り月額と、2025年との差額を計算したものです。さらにその差額を「支援金の新設」「料率引き下げ(健保・雇用)」「所得税の減税」に分解しています。すべて手取りシミュレーターと同じ計算エンジンの算出値です。スマホでは表を横にスクロールしてご覧ください。

月収(額面)2026年の手取り(月)前年差(月)支援金の新設料率引き下げ所得税の減税
10万円85,285円−15円−115円+100円±0円
12万円102,342円+825円−138円+120円+843円
15万円126,629円+829円−173円+150円+852円
20万円167,283円+397円−230円+200円+427円
30万円249,520円+382円−345円+300円+427円
40万円330,251円+796円−460円+400円+856円
50万円408,570円+782円−575円+500円+857円
前提:会社員/扶養親族なし/40歳未満(介護保険料なし)/全国平均料率/2026年度。手取りに住民税は含みません(別掲)。内訳3列は手取り月額への影響額で、合計は前年差に一致します(プラス=手取りを押し上げ、マイナス=押し下げ)。

内訳の3列は、その要素が2026年の手取り月額に与えた影響額です。マイナスは手取りを押し下げた要素(負担増)、プラスは押し上げた要素(負担減)を表します。「所得税の減税」の列が±0円になっている行は、もともと所得税がかからない収入水準で、減税の恩恵がないことを意味します。3列を足すと「前年差(月)」に一致します。

表を上から見ると、向きが途中で変わります。月収10万円の行は、所得税がもともと0円で減税の恩恵がなく、支援金の分だけ前年より−15円(手取り減)。一方、月収30万円の行は、支援金で月345円押し下げられるものの、料率引き下げと所得税の減税(月427円)で押し戻し、差し引き+382円(手取り増)。月収50万円でも+782円の手取り増です。増えるか減るかは、所得税がかかる水準か(おおむね年収120〜130万円台が分かれ目)で向きが分かれます。

増える金額は収入帯(所得税の税率区分)によって上下しますが、ここで大事なのは“向き”です。所得税を納めている層はプラス、所得税がかからない層はマイナス、と分かれます。40〜64歳は介護保険料率の引き上げも加わるため、増える人はやや少なめ・減る人はやや多めになります(月収30万円で+339円、月収10万円で−30円)。年齢区分・都道府県・扶養の有無で金額は変わります。

なぜ「一律に負担増」の印象になるのか

計算上は多くの人が前年より手取り増でも、「負担が増えた」という印象が強く残ることがあります。その理由の一つは、変化の見え方の非対称性にあります。

支援金は、明細に新しい名前の項目が増える形で表れます。今までなかった行が加わるため、負担が増えたことに気づきやすいのです。一方で、健康保険料や雇用保険料の引き下げはもともとある項目の金額が少し小さくなるだけ。さらに所得税の減税は、明細に新しい行が出るわけではなく天引き額が少し小さくなるだけなので、いっそう気づきにくくなります。

つまり、増えた負担は目立ち、減った負担は目立たない。この見え方の差が、実際の金額差以上に「一律に負担が増えた」という感覚につながりやすい、と説明できます。実際にどちらの向きかは、上の表のように分解して初めて見えてきます。

ここでの結論は「誰も負担が増えていない」ではありません。所得税がかからない低所得の層は、実際に支援金の分だけ手取りが少し減ります。増える人と減る人がいて、その向きは層によって分かれる、というのが計算から見える範囲の事実です。

月次・年末調整・住民税は別の軸

上の表は「毎月の給与から天引きされる分」に絞った月次の比較です。手取りの全体像を見るには、次の2点も分けて考える必要があります。

いわゆる178万円の壁(2026年度改正)は、月々の天引きにはまだ効きません。 基礎控除を最大104万円まで引き上げるこの改正は、給与の源泉徴収税額表に反映されるのが2027年(令和9年)1月からで、2026年の間は毎月の天引きには効きません。そのぶんは2026年12月の年末調整で1年分を精算し、払い過ぎがあれば戻る形になります。したがって年間で見ると、上の月次差よりもさらに負担が軽くなる人がいます。

住民税は別の軸で動きます。 住民税は前年の所得をもとに翌年課税されるため、収入の変化が反映されるまでにタイムラグがあります。上の表の手取りには住民税を含めていません。制度面の背景は2026年、手取りが増える人・減る人がいる理由で、年収別の目安は年収別の手取り早見表で確認できます。パート・アルバイトの方は「106万円の壁」は2026年にどう変わるかもあわせてご覧ください。

月々の天引き・年末調整で戻る分・住民税は、それぞれ動くタイミングが違います。そして今回見たように、月々の手取りが前年より増えるか減るかは、あなたの収入の水準によって分かれます。自分の年収や年齢区分で前年差がいくらになるかは、下のシミュレーターで試算できます。

自分の場合はどうなる? 年収や年齢などの条件を入れて、2026年の手取りを試算できます。

手取りをシミュレーションする

参照した公式情報

  • こども家庭庁子ども・子育て支援金制度(最終確認日:2026年7月8日
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)健康保険・介護保険の料率(最終確認日:2026年7月8日
  • 厚生労働省雇用保険・介護保険の料率、医療保険制度(最終確認日:2026年7月8日
  • 国税庁所得税の基礎控除・給与所得控除、令和8年分源泉徴収税額表、年末調整(最終確認日:2026年7月8日

リンク先は各機関の公式サイトです。個別の告示・料率表などの詳細は、公式サイト内の該当ページをご確認ください。

本記事は一般的な制度の解説です。個別のご相談は税理士・社会保険労務士や、こども家庭庁・国税庁・厚生労働省・協会けんぽなどの公式情報をご確認ください。数値は執筆時点の確定情報にもとづく概算・目安であり、実際の適用は個別の条件により異なります。